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2023.02.03

土地の購入

相続税対策に土地を生前贈与するメリット・デメリット

これから相続を控えている、終活を進めている人のなかには所有している土地や不動産を「生前贈与」することを検討している人も少なくないでしょう。生前贈与を用いれば、相続前に任意の相手に財産を渡せます。

本記事ではそんな生前贈与について解説します。

生前贈与とは?

贈与とは財産を無償で任意の相手に受け渡すことで、相手方が贈与を受け取る意思表示をすれば贈与が成立します。
生前贈与とは相続が発生する前に財産を贈与することですが、そこにはどのような目的があるのでしょうか。

生前贈与の目的

生前贈与には大きく分けて2つの目的があります。

ひとつは住宅の購入や進学などの教育資金、結婚や子育てなどを援助する目的で親族に財産を贈与することです。住宅取得や結婚、子育てには多額な資金が必要になるので、贈与された側も助かります。

もうひとつの目的は、生前贈与を活用して相続時の遺産総額を減らし、相続税の対策を取るためです。生前贈与を活用することで効率的に資産の承継をして、支援して親族の負担を減らしつつ、相続対策することを目的にしています。

土地の生前贈与の手順

土地を生前贈与する場合、手続き自体はシンプルで贈与契約書を締結して名義変更手続きを済ませば完了します。

贈与契約書は、財産の所有者が特定の財産を無償で受け渡し、贈与を受けた側がこの贈与に対して合意したことを示す書類です。土地の名義変更の証拠や、将来的なトラブルを回避するために作成されます。

贈与契約書は2部作成し、寄贈者(贈与を送る側)と受贈者(贈与を受け取る側)で1部ずつ保管することが一般的です。土地の売買契約書のように決まった形式はなく、必要な情報が書かれていれば契約書として成立します。

必要な情報とは、寄贈者の住所・氏名、受贈者の住所氏名、贈与する日付、贈与する土地の情報、贈与の方法です。土地の贈与であれば、名義変更の登記手続きについての費用負担や、固定資産税や都市計画税などの公租公課の負担なども記載して、贈与契約でトラブルが発生しないようにします。

契約書が整えば、その後は名義変更のために登記手続きを進めます。
名義変更の登記手続きは司法書士に依頼し、土地の所在地を管轄している法務局に手続きを代行してもらう流れが一般的です。

司法書士には司法書士報酬と手続きに必要な税金の「登録免許税」を渡し、手続きと同時に納税してもらいます。法務局での手続きが完了すれば名義が移転しますが、2週間から3週間程度過ぎると登記事項証明書と土地の権利証である登記識別情報通知が送られてきます。

これらの書類は土地の名義が移転したことを示す書類で、登記識別情報通知は再発行されないものなので、大切に保管しましょう。贈与する土地を借地や駐車場などで貸している場合には、所有者変更のお知らせを事前に送り、所有者変更の変更契約書を作成して、貸している人と変更契約書を取り交わしておきましょう。

土地の生前贈与でかかる費用

土地の生前贈与では以下の費用や税金がかかります。

・司法書士報酬
・登録免許税
・不動産取得税
・印紙税
・贈与税

司法書士報酬と登録免許税は名義変更の登記手続きで必要になる費用と税金です。
不動産取得税は土地を取得した際に都道府県に納税する税金で、土地を受け取った受贈者が納税します。

土地を贈与された場合の納税額は固定資産税評価額の4%で、固定資産税評価額は毎年5月に送られてくる固定資産税の通知書や、役所で取得できる固定資産税評価証明書で確認できます。

印紙税は贈与契約書を作成したことでかかる税金で、印紙を購入し貼り付けて消印することで納税されるものです。

一般的な印紙税は売買代金に応じて金額が変わりますが、贈与契約書の場合は金額の明記がないために200円の印紙を貼ります。収入印紙は郵便局や法務局で購入できますが、200円の印紙ならば最寄りのコンビニエンスストアでも取扱いしていることがあります。

贈与税は贈与を受け取った受贈者に対して課税される税金です。

土地を生前贈与するメリット

土地の生前贈与では贈与したい人に渡せる、財産を短期間で渡せる、相続税の減額などのメリットがあります。
具体的にどのような面がメリットになるのか解説します。

贈与したい人に渡せる

相続が発生した場合、有効な遺言書がなければ相続人で均等に分ける法定相続か、相続人同士で相続内容を決定する遺産分割協議によって相続内容が決められます。

このとき、所有している財産がどの相続人の手に渡るか分かりませんが、贈与ならば生きているうちに渡したい人に土地を贈与できます。親族が遠方に住んでいて疎遠なので、近くに住む親族に土地を贈与する、などの方法を取れます。

短期間で財産を渡せる

贈与は当事者間で贈与契約を取り交わし、名義変更の登記手続きをするだけなので、早ければ1か月以内の短期間で土地を渡すことが可能です。

一般的な不動産売却は売却を決意してから引き渡されるまで6か月以上の期間を要し、不動産会社に買い取りを依頼しても数か月かかることが想定されます。余命宣告され、あまり時間がない状況でも、贈与ならば短期間で所有権を移転できます。

将来的な相続税を減額できる

相続税は遺産総額に応じて税率や控除額が変わり、総額が大きければ大きいほど高額の納税額になってしまいます。

生前贈与することで遺産総額から贈与した部分の土地評価額を差し引けるので、そのぶんの贈与税を減額できることが生前贈与のメリットです。

生前贈与のデメリット

生前贈与のデメリットは贈与税が課税されることや、不動産取得税が課税されること、将来的な相続の際にトラブルの原因になることです。

具体的な内容を解説します。

贈与税が課税される

贈与を受けた受贈者に対し、土地の評価額に応じて土地評価額の10%から55%が課税され、土地評価額は相続税路線価を根拠に計算します。

相続税路線価は国税庁が公示している相続や贈与の際の基準になる不動産評価額で、道路に対して1㎡あたりの土地評価額が設定されています。その道路に面している土地は土地評価額×敷地面積の計算で、贈与の土地評価額を計算できるのです。

不整形地や、道路から奥行きが長い土地、2本の道路に面している土地など、形状によって係数もあり、土地形状による不公平感も出ないようになっています。

相続税路線価が設定されていない道路に面している土地に対しては倍率方式が採用されています。倍率方式とは、固定資産税評価額に対し国税庁が設定した倍率をかけて評価額を求める計算方法です。

なお、建物がある場合には建物の固定資産税評価額をそのまま用います。ここで算出された評価額によって贈与税率が決まり、評価額×税率の計算で贈与税額を計算できるのです。

不動産取得税がかかる

不動産取得税は不動産を購入や贈与などで取得した場合に1度だけ課税される税金ですが、贈与の場合では課税され、相続で取得した場合には課税されません。

相続は売買や贈与などと違い、形式的な所有権の移動とみなされるため非課税となるのです。

土地の不動産取得税は固定資産税額の4%が課税されます。住宅用地や建物が付属している土地の場合では軽減措置を受けられる場合があります。

贈与税と相続税はどちらがお得?

土地を生前贈与する場合には贈与税がかかりますが、相続税と比較した場合、どちらの税額のほうが少なく、お得なのでしょうか。

生前贈与と相続、贈与税の控除制度について解説します。

贈与と相続の関係

生前贈与には贈与税がかかり、相続によって取得した財産には相続税がかかります。

もし、贈与税がなければ相続税を回避するための贈与が増えるので、課税逃れを防いで公平性を保つために贈与税が設定されています。

また、生前贈与と相続税の関係のなかで、相続が発生する前の3年以内に贈与した財産は相続税の対象になっています。

ただし、2024年以降の贈与に関しては亡くなる7年前から贈与した財産の合計額から100万円を差し引いたものが相続財産の対象になります。贈与税を支払っている場合には相続税額から差し引いて計算します。

贈与税と相続税の税額

原則として相続税より贈与税のほうが高額です。その理由のひとつに相続税の基礎控除があるからです。

相続税の基礎控除とは、遺産総額から差し引ける控除額のことで、3,000万円+相続人の数×600万円で算出します。

たとえば、相続人が3人居た場合には3,000万円+1,800万円が基礎控除額となり、遺産総額の評価額が4,800万円以下ならば相続税は課税されません。仮に遺産総額が3,000万円だった場合、相続ならば相続税は課税されません。

3人の相続人に1,000万円ずつ生前贈与した場合は、贈与税額は177万円または231万円なので、贈与税のほうが高くなります。相続人が3人で、遺産総額が4,800万円の基礎控除を超えた場合、相続税の最低税率は10%になるので、贈与税を支払ったほうが得になるケースも発生します。

細かく計算した場合、財産の種類や控除の適用、個別の条件によってどちらが得になるかケースによって異なるので、詳細は税理士などの専門家に確認しましょう。

暦年贈与・相続時精算課税制度を利用して負担を減らす

暦年贈与とは贈与額が110万円以下ならば贈与税がかからないことを利用して、贈与を進める方法です。

しかしながら、110万円を毎年贈与するためにはその都度、贈与契約書を締結する、贈与の時期をずらす、金額を変更するなどの工夫が求められました。工夫しないと定期贈与とみなされることもあり、贈与してきた総額に対して贈与税が課税されてしまう可能性があるからです。

2024年以降は暦年贈与の制度がなくなり、相続時精算課税制度にて110万円の基礎控除額が設けられます。

相続時精算課税制度とは総額2,500万円までの贈与は贈与とみなさず非課税になり、その金額は相続時に精算する制度です。相続時精算課税制度の110万円までの基礎控除とは、年間110万円までの贈与は贈与税がかからず、相続財産に加えない相続税のかからない控除です。相続時精算課税制度は初めて贈与をした翌年の確定申告期間に贈与税を申請して、届出書を添付することで手続きが完了します。

注意事項として、贈与した場合には翌年の贈与税の申告が必要になることや、相続時精算課税制度を利用して土地を贈与すると、一部相続税の控除などが利用できなくなる点があります。

本制度については2023年度の税制改正大綱にて発表された内容です。暦年贈与や相続時精算課税制度を利用している人は、専門家などに確認を取ってから手続きを進めることをおすすめします。

控除制度を用いて贈与税を節税する

土地を生前贈与するにあたって、控除制度を利用することで贈与税を節税、あるいは非課税にすることも可能です。

そのうちのひとつに配偶者特別控除制度があります。

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産や居住用不動産を購入するための資金を贈与する場合、基礎控除110万円のほかに2,000万円までならば控除されます。贈与を受けた翌年の3月15日までに居住することが条件なので、土地贈与後に建築し居住し、住み続ければ条件を満たします。

また、夫が所有者で居住中の家の土地や建物も贈与可能なので、相続が発生しても妻が住居に困らないように贈与を進めて置くことも相続税対策です。さらに、前項で解説した相続時精算課税制度も土地の生前贈与で利用できます。

土地を生前贈与する際に2,500万円までならば贈与税が非課税、相続時に精算する制度ですが、土地そのものを贈与することも可能です。土地の評価額は相続税路線価、または倍率方式で計算し、そのときの評価額が2,500万円以下ならば贈与税は課税されません。

誰に土地を渡すのかによってどの制度を用いるのか、適切な制度を用いて贈与税を節税しましょう。

まとめ

土地の生前贈与は贈与契約書を作成し、名義変更の登記手続きをするだけで贈与が完了するので、時間をかけずに土地を贈与できます。

生前贈与のメリットは受贈者を選んで土地を贈与できることと、相続税対策になることです。デメリットとしては贈与税が課税されることや不動産取得税が課税されることです。

贈与税と相続税を比較した場合、原則的には基礎控除があるぶんだけ相続税のほうが税額を安く抑えられますが、条件によっては贈与税のほうが安くなる場合があります。遺産総額や相続人の数など条件が変わるだけでどちらが有利か変わってくるので、これから土地の生前贈与を検討している人は、専門家への確認も検討しておきましょう。

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