2022.10.31
不動産の購入
道路に接していなくても住宅建築できる43条但し書き道路物件って何??資産価値はあるの?
通常、土地に住宅を建築する場合、接道義務を果たした土地にしか住宅を建築することができません。
しかし、特定行政庁から許可を得た場合のみ、接道義務を果たしていなくても住宅建築をすることができるのです。
この許可のことを建築基準法43条但し書き許可といいます。
それでは、建築基準法第43条但し書きとはどのようなものなのでしょうか。
本記事では、建築基準法条の接道義務とは何か、43条但し書きとは何か、43条但し書きで建物が建築できる土地に資産価値はあるのかなどを解説していきます。
建築基準法上の接道義務
土地上に建物を建築する場合には、建築基準法42条に記載されている道路に接していなければなりません。
また、建築基準法42条に記載されている道路に2m以上接している必要があります。(ただし、建築物の内容によっては幅員6m以上の道路に4m以上接していないといけないケースもあります。これは各自治体により定めがあります。)
この建築基準法42条に記載された道路がどのようなものなのか紹介していきます。
なお、42条1項1号道路~42条1項5号道路までは幅員4m以上の道路で、42条2項道路と3項道路は幅員4m未満の道路です。
- ・42条1項1号道路(国道や県道、市道など4m以上の幅員が確保されている道路)
- ・42条1項2号道路(都市計画法や旧住宅造成事業に関する法律に基づき作られた道路)
- ・42条1項3号道路(都市計画区域に編入されたとき、または建築基準法が施行された時のいずれか遅い時にすでに存在していた道路)
- ・42条1項4号道路(道路法や都市計画法などにより造られる道路で2 年以内に事業が開始される予定として特定行政庁が指定した道路)
- ・42条1項5号道路(道路法や都市計画法などによらずに造られる道で、特定行政庁がその位置を指定したもの。位置指定道路。)
- ・42条2項道路(都市計画区域に編入されたとき、または建築基準法が施行された時のいずれか遅い時にすでに存在していた道路で建築物が建ち並んでいた幅員4m未満の道路)
- ・42条3項道路(土地の状況によりやむを得ない場合に特定行政庁が指定した道路)
道路には数多くの種類がありますが、これらの道路のうちいずれかに2m以上接している場合は建物を建築することができます。
ただし、幅員4m未満の道路に接している場合はセットバックをしなければなりません。
なお、セットバックとは、土地の境界線から一定の間隔を確保して建物を建てることです。
43条但し書き道路物件とは
43条但し書き道路物件とは、建築基準法で定める道路に接道していない物件で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て住宅建築を許可した土地のことです。
特定行政庁や建築審査会の43条但し書きの基準は各自治体によって異なりますが、以下の条件が揃っている場合、43条但し書きを認められるケースが大半です。
- ・建築基準法に定める道路に接していないこと
- ・敷地内に道路空間として4m以上の空間があること
- ・建築する建物は2階以下の専用住宅であること
- ・通路になる部分の所有者全員から通路として使用する許可を取得していること
43条但し書きの手続き方法
43条但し書き道路物件を購入した場合や住宅再建築をする場合にはどのような手続きを取れば良いのでしょうか。
ここからは43条但し書きの許可を取る手続きを簡易的に説明していきます。
特定行政庁と事前相談をする
43条但し書き許可は特定行政庁が建築審査会の同意を得たうえで許可するということになっています。
そのため、まず特定行政庁から建築審査会に43条但し書き許可をするよう働きかけてもらわないといけません。
働きかけてもらうためには、43条但し書きを利用できる要件が整っていることを事前に特定行政庁に確認してもらう必要があります。
なお、特定行政庁とは市町村の建築関係の課のことです。
市町村により建築指導課、建築課など名称は異なります。
申請書類の準備
特定行政庁に事前相談をし、ある程度打ち合わせ内容がまとまったら43条但し書き許可に必要な書類を準備します。
43条但し書き許可に必要な書類は、次のとおりです。
ただし、特定行政庁により必要な書類は異なります。
- ・43条但し書き許可申請書
- ・公図
- ・登記簿謄本
- ・案内図
- ・建築する建物の資料一式
- ・通路部分に利用する土地の所有者の承諾書
特定行政庁へ書類を提出
43条但し書き許可の申請関係書類を不備なく特定行政庁に提出すると、特定行政庁から建築審査会へ書類が回ります。
そして、特定行政庁が建築審査会の同意を得たうえで、43条但し書き許可が出ます。
特定行政庁から許可
特定行政庁から43条但し書き許可が出ると、建物建築を開始することができます。
この建物は、提出した書類の内容と同じ建物しか建築することができません。
また、建築する建物を変更したり、再建築したりするたびに43条但し書き許可が毎回必要になります。
ただし、建物の変更については変更届出で済む場合もあります。
43条但し書き道路物件に資産価値はあるの?
43条但し書き道路物件には資産価値はありますが、通常の接道している物件と比べると地産価値はかなり低いと思ったほうが良いでしょう。
43条但し書き道路物件は、特定行政庁から建築許可が出ていたとしても将来にわたり永年、許可が出るわけではありません。
特定行政庁や建築審査会の許可基準が変更されたり、道路部分の所有者の承諾書が取れなくなったりすることがあります。
そうなってしまった場合、43条但し書き許可は下りず建物を再建築することができなくなってしまいます。
再建築できない土地の価値はほとんどないため、建物建築ができない農地と同様に不動産売買を行うことができなくなってしまいます。
しかも、不動産売買はなかなかできないのにも関わらず、固定資産税課税評価額はそこまで低くはならないため、固定資産税や都市計画税の課税額は大きい状態のままです。
接道している土地に比べると固定資産税課税評価額は低くなりますが、農地ほど大きく固定資産税課税評価額が下がることはありません。
43条但し書き道路物件でありがちなトラブルや失敗談
43条但し書き道路物件は、接道している通常の土地に比べトラブルを引き起こす可能性が高い不動産です。
ここからは、43条但し書き道路物件がどのようなトラブルを引き起こすのか紹介していきます。
住宅建替えがいつできなくなるのかわからない
43条但し書き道路物件を購入した場合、購入時に住宅再建築が認められていても将来建物が再建築できなくなることがあります。
住宅が再建築できなくなる要因は、特定行政庁の43条但し書き許可条件が変わる、道路の代わりになる空間の所有者から通路使用承諾書が取れなくなるの2点が代表例です。
特に注意すべき点は、道路の代わりになる通路の所有者から通路使用承諾書が取れなくなることです。
特定行政庁の許可基準は今までの運用実績に基づいて決められており、変更があったとしても大きな変更は考えにくいのが現状です。
しかし、通路使用承諾は通路所有者の気分で断ることができてしまいます。
通路使用承諾書は取得できなくなる可能性が高く、いつまでも承諾書を取得し続けることは難しいと考えるべきです。
通路所有者が代替わりして相続した人が、通路使用承諾書を出さなくなるケースもあります。
そのため、通路所有者とトラブルになることも多いため、43条但し書き道路物件は購入しないほうがよいと言われています。
土地の担保評価が認められにくい
道路に接していない物件は建物建築ができず利用価値が少ないため、一般の購入希望者はまず見つかりません。
そのような価値の低い土地に対して金融機関は担保価値がないと判断します。
担保価値がないと判断されてしまうと、その土地を利用して融資を受けることができなくなります。
43条但し書き道路物件は特定行政庁から「例外的に」建物建築を認められただけであり、原則は建物を建築することができない土地です。
金融機関は建物が建築できるとしても例外的に認められた土地に対しては、担保価値がかなり低いとみなし融資審査もかなり厳しくします。
そのため、43条但し書き道路物件は、接道していない物件とほぼ同等の評価をされてしまいます。
43条但し書き道路物件を購入した後、資金繰りが苦しくなり土地を担保にしてお金を借りようとしても金融機関が貸してくれないという事態が発生する可能性があるため注意が必要です。
売却するのが難しく相続で揉めることもある
43条但し書き道路物件は、いつ建て替えの許可が下りなくなるかわからないため、非常に取扱いが難しく担保価値も見出しづらい不動産です。
そのため、相続が発生したときに43条但し書き道路物件を誰が相続するのか揉める可能性も出てきてしまいます。
また、43条但し書き道路物件を相続しても利用価値が低く、固定資産税や都市計画税だけ納税し続けないといけない土地になってしまうという事態も想定されます。
しかも、売却したくてもなかなか売却できないという現実も待っています。
43条但し書き道路物件を保有するメリット
43条但し書き道路物件を保有することにはデメリットが多いですが、メリットもあります。
例えば、高級住宅地や人気のある学校区で不動産が欲しくても、不動産価格が高く手が出せないというようなときに、43条但し書き道路物件であれば手に入れやすいこともあります。
また、43条但し書き道路物件は公道から離れているケースが多く、騒音問題になりにくかったり、公道までの通路で子どもを安心して遊ばせることができたりするメリットもあります。
売却することは難しいですが、住み続ける(建物の再建築もしない)のであれば、良い物件と言えるかもしれません。
43条但し書き道路物件売却する方法
43条但し書き道路物件は一般の購入者にはなかなか売却できないため、処分方法は限られます。
43条但し書き道路物件を売却するときの方法は、次の2つの方法です。
- 隣地に購入してもらう
- 不動産買取業者に買い取ってもらう
隣地に購入してもらう
一般個人で43条但し書き道路物件を購入するメリットがあるのは、基本的に隣地所有者だけです。
そのため、43条但し書き道路物件を売却する場合には、まず隣地所有者に購入してもらえないか確認します。
隣地所有者は隣地を相場より安く購入できることにより、土地が大きくなるというメリットがあります。
いくら隣地でも43条但し書き道路物件を接道している物件と同じ金額で売買することはできませんが、第三者の一般個人が購入する金額よりは少し高めに提示しても良いでしょう。
不動産買取業者に買い取ってもらう
隣地が購入しない場合は43条但し書き道路物件を売却するのはかなり難しく、不動産買取会社に買い取ってもらうという選択をします。
この場合、買取金額は相当安くなる可能性があります。
そのため、買取金額を多くの不動産買取会社より提示してもらい、金額が高い不動産買取会社、買取条件の良い不動産買取会社を見つけることが重要になります。
43条但し書き道路|まとめ
43条但し書き道路物件とは43条但し書き許可を得て、建築基準法の接道義務を果たしていない土地に建物を建築する許可を取得した物件のことです。
これはあくまで例外として特定行政庁から許可を得ている物件のため、不動産の価値としては接道をしている物件と比べると価値はかなり低く評価されてしまいます。
これには理由があり、例外的に許可を受けていると言っても、この許可は永年取得できるわけではないからです。
建物を再建築するごとに許可申請をしなくてはなりませんが、次に建物を再建築するときに43条但し書き許可が下りるとは限りません。
つまり、43条但し書き道路物件は建物が建築できない土地になる可能性が高いということです。
43条但し書き物件にはこのようなマイナス点が多く、トラブルを引き起こしやすい物件でもあります。
誰が43条但し書き許可物件を相続するのかといったことや、隣地の通路使用承諾が下りず再建築できなくなったなどということが起きる可能性があります。
もし43条但し書き道路物件を購入、売却検討しされている場合には不動産会社へ早めに相談したほうが良いでしょう。
不動産会社にアドバイスをもらって進めることが、43条但し書き道路物件を上手く利用するコツです。