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2022.10.09

不動産の購入

液状化現象とは?不動産購入時にどんなリスクがある?

2011年3月11日、岩手・宮城・福島の3件を襲った東日本大震災。津波で2万人以上もの死者・行方不明者を出した未曽有の大災害でした。

津波の他に発生していたのが「液状化現象」です。震災クラスの大地震が発生すると液状化現象も発生し各種インフラの他、不動産売買にまで大きな影響を受けてしまいます。

当記事では以下の内容について解説します。

1.液状化現象の基礎知識
2.不動産物件資料に「液状化リスク」の記載はない
3.不動産購入時に説明しなければならないリスク
4.「液状化現象」を調査する方法

以上、液状化現象によって不動産購入時に想定されるリスクについて理解を深めましょう。

1.液状化現象の基礎知識

液状化現象とはどのようなものなのでしょうか。ここでは液状化現象の基礎的な内容を解説します。

1)液状化現象とは?

液状化現象とは、「地震の揺れの影響で地盤が液体のようになる現象」です。

通常、地盤は同じ成分・大きさの砂や土が結びつき、その間に地下水を満たした状態で維持されております。これが地震の揺れでこの結びつきが壊れてしまい、砂と地下水が分離します。

砂と地下水が分離されてしまうと砂がバラバラに散り地下水に浮いた状態になり、これが液状化現象といいます。
液状化の状態になると、建物の沈下や傾き、マンホールの浮き上がりなど甚大な被害が発生します。

日本国内で液状化現象が発生した事例で有名なのは

・新潟地震(1964年6月)
・日本海中部沖地震(1983年5月)
・阪神淡路大震災(1995年1月)
・東日本大震災(2011年3月)

などがあります。

参考文献:液状化現象がもたらす深刻なリスクと企業における主な対策 | FASTALERT

2)液状化現象発生リスクが高い地域

液状化現象発生リスクの高い地域にはどのような特徴があるのでしょうか。

・海岸
・砂丘地帯
・埋立地
・河川跡

上記地域は液状化現象発生リスクが高いと言われています。ただし、地震が発生したからといって上記の地域が必ず液状化現象が発生するとは限りません。

液状化現象は、以下の4つの条件が揃って発生するといわれています。

・砂地盤である
・砂地盤が締め固まっておらず緩いまま
・砂地盤内に地下水が満たされている
・ある程度の強い揺れが一定時間続く

参考文献:液状化Q&A

3)液状化現象のリスクが高い建物

建物にもさまざまな構造の建物があります。そのなかでも、木造の戸建住宅が液状化現象の被害を受けやすいといわれています。

高層マンションなどのビルは、基礎工事の段階で杭を固い地盤に達するまで打ち付けますので液状化の影響は少なく済むでしょう。ただし、戸建住宅は杭を打ち付けるといったケースは少なく、液状化現象の影響を受けやすくなるわけです。

2.不動産物件資料に記載されているリスク

土地や建物の不動産を探すとき、ほとんどの場合は不動産業者へ行くでしょう。

店頭に張り出している物件資料やホームページを見て物件情報を集めます。

1)不動産物件資料に記載されている情報

不動産物件資料には下記の事項が記載されています。

・物件所在地
・売買代金
・土地の形状や建物の間取り
・土地建物の面積
・前面道路の幅員
・その他特記事項など

上記の事項が記載されています。前面道路の幅員が4m未満であり、セットバックが必要であったり対象の不動産が都市計画道路にかかっていたりした場合、その旨を不動産物件資料に記載しなければなりません。

特に買主側に不利となる事項はあらかじめ通知しておかなければ後々のトラブルに発展してしまうからです。

2)液状化現象のリスクは不動産物件資料に記載されていない

前項の記載事項は不動産物件資料に記載されており、買主にとって不利となる事項もあらかじめ把握することができるでしょう。では、液状化現象のリスクも記載されているのでしょうか。

答えは残念ながら「ノー」です。不動産物件資料には液状化現象のリスクまでは記載されておりません。宅建業法上でも液状化現象のリスクを記載していなくても何の問題もありません。

3.不動産購入時に説明しなければならないリスク

不動産探しをした結果、希望の不動産が見つかった場合は売主と不動産売買契約を締結しますが、売買契約に先立って宅地建物取引士から重要事項の説明を受けます。

重要事項の説明というのは、契約書に記載されている内容で特に買主にとって重要となる事項(リスクなど)を抜粋して口頭で説明するものです。

1)不動産購入時に不動産業者が説明するべき事項

不動産購入時に不動産業者が重要事項として説明しなければならない事項として、主に以下の事項があります。

・登記簿上の権利
・都市計画法上の市街化区域内か市街化調整区域内かの説明
・建築基準法上の用途地域
・土砂災害警戒区域内か否か
・造成宅地防災区域内か否か
・津波災害警戒区域内か否か
・石綿使用調査結果の記録の有無
・耐震診断を受けたものであるか
・建物状況調査(インスペクション)を受けているか

など、大まかに上記の項目を不動産売買契約に先立って宅地建物取引士が説明します。

2)液状化現象のリスクについては説明義務はない

しかし前項の説明しなければならない事項と違い、液状化現象のリスクについては重要事項の説明義務はありません。したがって、購入後に液状化現象が発生しても不動産業者には何の責任も発生しません。

ひとたび液状化現象が発生してしまうと甚大な被害が出てしまうのに重要事項の説明事項にないのはおかしなことだと思うでしょう。

こちらについて、2011年に本間勝さんという方が千葉県浦安市の液状化現象についてまとめたレポートがありますので以下に紹介します。

「不動産の取引において、土地の情報を綿密に買主に伝達する具体的ルールは存在していない。
あくまでも民法が求める公平公正な売買の理念のもと,瑕疵や不法行為に当たらない土地取引を求めているに過ぎない。」
「不動産の分野においては,土地の環境情報提供が慣習化していないことから,開発におけるトラブル予防の観点から,積極的な情報活用と慣習化が望まれるところである.」

参考文献:浦安市における液状化被害・復旧状況と 不動産取引における地質情報の活用策

3)液状化現象のリスクは購入者自らが調査しなければわからない

上記レポートのとおり、液状化現象のリスクの有無は自分で調べなければわからないというのが現状です。不動産業者の説明義務に液状化現象のリスクがないというのも本当に怖いところです。

不動産購入は一生に一度の買い物といわれているほど高額な売買になりますので、「こんなはずではなかった」といったことのないように事前調査は綿密におこないましょう。

4.「液状化現象のリスク」を調査する方法

不動産物件資料や不動産売買契約前の重要事項の説明などでも液状化現象のリスクは説明されません。とはいえ、液状化現象のリスクはそのままうやむやにしておくのも得策ではありません。

よって液状化現象のリスクは自身で調査しましょう。

調査方法は下記の方法があります。

・市区町村役場の担当部署へ問い合わせ
・専門業者に地盤調査を依頼する

以下にそれぞれ解説します。

1)市区町村役場の担当部署へ問い合わせ

自分で市区町村役場の担当部署へ出向き、対象不動産界隈の液状化現象のリスクを問い合わせてみましょう。

大都市や過去に液状化現象の発生した事例のある自治体では防災マップを備えておりますので、購入対象の不動産が液状化現象のリスクの高い地域か否か把握しておくことができます。

札幌市清田区では液状化現象が発生した事例がありますので、防災マップに液状化現象についての記載もあります。
参考文献:地震防災マップ/札幌市

なお、すべての自治体が防災マップに液状化現象について記載しているとは限りません。

2)専門業者に地盤調査を依頼する

液状化現象のリスク調査を地盤調査会社へ地盤調査を依頼する方法も有効です。地盤調査会社では地盤の強度を調べるため、ボーリング調査をおこないます。余談ではありますが、現在では新築住宅を建築する場合、地盤調査としてボーリング調査を実施しなければなりません。

代表的な地盤調査は

・SWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)
・SDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)
・ボーリング標準貫入試験

などがあります。

2)ー1 SWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)

新築住宅の地盤調査として一般的に採用されているのがSWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)です。

元来、スウェーデンの国鉄会社が使用していた地盤調査方法でした。2020年10月にJIS(日本工業規格)が改正され、スウェーデン式サウンディング試験⇒スクリューウエイト貫入試験と改名されました。

現在では比較的安価で容易に実施できるという理由から、一般の新築戸建住宅の地盤調査で広く採用されています。

SWS試験の手順は

1.鉄の棒(ロッド)を敷地の四隅と中央の地盤に垂直に突き刺す
2.ロッドの沈み具合を調査
3.ロッドが沈む場合は軟弱地盤、沈まなかった場合は強固な地盤と判断

以上の流れで試験をおこないます。試験時間はおおむね半日程度です。

なお、土地の形状などによっては調査箇所が多くなる場合もあります。

参考文献:スクリューウエイト貫入試験(旧 スウェ-デン式サウンディング試験)とは?(SWS・SS試験)方法と結果 | 地盤調査・地盤改良のサムシング

SWS試験の長所と短所は以下のとおりです。

長所
・試験装置・試験方法が簡単で容易
・他の試験にくらべ安価

短所
・れきやガラといったものが地中に入り込んでいた場合、貫入が困難
・調査深度はおおむね10m程度しかない

などといったものがあります。他にも軟弱地盤が試験対象で固い地盤では試験がむずかしいといった側面もありますので、まずは地盤調査会社へ問い合わせましょう。

2)ー2 SDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)

SWS試験より更に精度の高い試験がSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)です。

音で土質を判断するSWS試験に対し、SDS試験は近隣のボーリングデータや地形条件、トルクなどのパラメータなどを参考に土質を判断します。

SDS試験は、一般財団法人ベターリビングの建設技術審査証明も取得している為、試験結果の信頼性も高いでしょう。

このSDS試験に水位測定も追加して行うことで、液状化現象のリスク調査も実施可能です。しかも大掛かりなボーリング調査にくらべ1/3のコスト、調査時間も1/5に抑えられます。

参考文献:SDS試験|地盤調査・構造設計・インスペクションなら【ジャパンホームシールド】

SDS試験の長所と短所は以下のとおりです。

長所
・土質判定ができるため、液状化現象のリスクなどを回避できる
・過圧密粘土の判別が可能であり、不要な地盤改良を削減できる

短所
・SWS試験とくらべ、費用が高い
・SWS試験よりも調査日数がかかる
などといったものがあります。SDS試験では土質も判別できますので、試験結果の信頼性が高いでしょう。

2)ー3 ボーリング標準貫入試験

おもりをある高さから落とし、サンプラーが地中に打ち込まれる落下回数(N値)を測定する試験内容です。

ボーリング標準貫入試験の長所と短所は以下のとおりです。

長所
・N値から地盤の強度を推定できる
・地下水位の確認ができる
・土の採取が可能で、土層の確認ができる

短所
・費用が高い
・調査用スペースが大きくなってしまう

地盤調査をした結果、軟弱地盤もしくは液状化現象のリスクが高いと判断された場合は、住宅の重さに耐えられるようにするため地盤改良工事をしなければなりません。

地盤改良工事は地盤の状態によって以下の3つに分けられます。

・表層地盤改良 ⇒ 浅いところに軟弱地盤がある場合に実施
・柱状地盤改良 ⇒ 深いところに軟弱地盤がある場合に実施
・鋼管杭工法  ⇒ 直下の地盤が軟弱な場合に実施

これらの地盤改良には、土壌を固くするための固化剤を散布したり建物を支持できる堅固な地盤に達するまで鋼製の杭を打ち込んだりします。

5.まとめ

ここまで液状化現象のリスクについて解説してきました。

液状化現象とは、「地震の揺れの影響で地盤が液体のようになる現象」です。

液状化現象が発生しやすい地域は

・海岸
・砂丘地帯
・埋立地
・河川跡

などがあり、木造の戸建住宅が液状化現象の影響を受けやすいというデータもあります。

不動産購入時には液状化現象のリスクについての説明義務はなく、不動産物件資料にも液状化現象のリスクについての文言は載っておりませんので自分で液状化現象のリスクについて調査する必要があります。

液状化現象のリスク調査方法として以下の試験があります。

・SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)
・SDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)

また、大都市や液状化現象の被害を受けた自治体であれば市区町村役場の担当部署へ対象の不動産が液状化現象のリスクの有無を調査することも可能です。

大抵の人であれば一生で一度の大きな買い物ですので、不動産選びで失敗のないように、よい不動産に巡り合えるように徹底的に調査しましょう。

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