2022.07.04
土地の購入
土地の地目変更の費用は?手続き方法も徹底解説
「地目(ちもく)」とは、土地の現在の用途を示す分類のことで、登記簿に記載されています。住宅を建てることを目的として土地を購入した場合、地目が「宅地」であれば、特に手続きをすることなく家を建てられます。一方で、「宅地」以外の地目の土地を購入した場合は、登記上の地目を現況の使用用途と合わせる必要があるため、「地目変更登記申請」をしなくてはいけません。
地目変更登記の際は登録免許税が不要で、一般の人が個人で申請するだけであれば、交通費等の実費以外に費用はかかりません。土地家屋調査士に依頼する場合は、一筆あたり5万円程度、一筆追加ごとに2~3万円が依頼料の相場で、その他諸費用を上乗せして支払います。
不動産登記法により、土地の状況(使用用途)の変更があった場合には、1ヶ月以内に地目変更登記の申請をしなくてはいけません。地目変更登記の申請は一般の人でもできますが、農地(「田」または「畑」)を宅地として使用する場合は、法務局への申請以外の手続きも発生するため、土地家屋調査士と呼ばれる専門家に依頼することも可能です。
土地を購入した直後は、その他の手続きに追われて地目変更登記申請を忘れる人も少なくありません。しかしながら、地目を変更しないままでいると、罰則以外にもデメリットが発生する可能性があります。土地を購入する前に、引き渡し後に行うべき手続きも含めた大まかな流れを把握しておき、地目の変更まで確実に行うようにしましょう。
地目とは
地目とは、土地の用途を示す分類です。
不動産登記法により、登記官が土地の現況や利用目的を判断し、土地の登記事項証明書に記載します。
不動産登記事務取扱手続準則(地目)第68条に定められた地目は、下記の表のとおり23種類に分類されています。
地目 | 内容 |
---|---|
田 | 農耕地で用水を利用して交錯する土地 |
畑 | 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地 |
宅地 | 建物の敷地及びその維持若しくは効果を果すために必要な土地 |
学校用地 | 校舎、附属施設の敷地及び運動場 |
鉄道用地 | 鉄道の駅舎、附属施設及び路線の敷地 |
塩田 | 海水を引き入れて塩を採取する土地 |
鉱泉地 | 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地 |
池沼 | かんがい用水でない水の貯留池 |
山林 | 工作の方法によらないで竹木の生育する土地 |
牧場 | 家畜を放牧する土地 |
原野 | 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地 |
墓地 | 人の遺体又は遺骨を埋葬する土地 |
境内地 | 境内に属する土地であって、宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地(宗教法人の所有に属しないものを含む。) |
運河用地 | 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地 |
水道用地 | 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地 |
用悪水路 | かんがい用又は悪水はいせつ用の水路 |
ため池 | 耕地かんがい用の用水貯留池 |
堤 | 防水のために築造した堤防 |
井溝 | 田畝又は村落の間にある通水路 |
保安林 | 森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地 |
公衆用道路 | 公衆用道路 一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない。) |
公園 | 公衆の遊楽のために供する土地 |
雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 |
参照元:法務省「不動産登記事務取扱手続準則(地目)第68条」
登記地目と課税地目
地目は、登記事項証明書などの登記記録に記載されている「登記地目」と、相続税や固定資産税を算出する際のもととなる「課税地目」があります。
一般的に登記地目は前述の23種類になり、課税地目は不動産登記事務取扱手続準則第68条及び69条に準じて9種類が定められています。
番号 | 地目 |
---|---|
1 | 宅地 |
2 | 田 |
3 | 畑 |
4 | 山林 |
5 | 原野 |
6 | 牧場 |
7 | 池沼 |
8 | 鉱泉地 |
9 | 雑種地 |
不動産登記は申請主義となっており、土地の現況が変わった場合は、土地の所有者が法務局に申請してはじめて地目が変更され、自動的に登記地目が変わるということはありません。
一方で課税地目は、固定資産税や土地計画税の税額を計算する際に用いられるもので、市町村が調査を行い、現況が変わっていれば自動的に変更されます。そのため、固定資産税評価証明書や納税証明書に記載されている「課税地目」と、登記簿を取得して確認する「登記地目」が異なる場合もあるということを押さえておきましょう。
地目変更登記の費用
土地の地目変更登記は、申請の際に特別な免許や資格が必要というわけではないため、一般の人でもできます。しかし、手間や時間がかかるうえ、購入した土地の地目によってはイレギュラーな対応が必要になる場合もあります。その場合は専門家への依頼が必要になるため、あらかじめかかる費用も把握しておくといいでしょう。
専門家に依頼する場合
地目変更登記を専門とするのは、「土地家屋調査士」と呼ばれる資格を持った人です。土地家屋調査士に依頼する場合は、1筆あたり5~6万円が相場。土地が複数ある場合は、1筆当たり2~3万円程度追加されるイメージです。
上記の金額は、単に土地家屋調査士に登記手続きの依頼をする場合で、地積測量図を取得する場合や、現地調査のための交通費が必要になった場合は、それらの諸費用も依頼主が負担することになります。
自分で申請する場合
土地家屋調査士に依頼せず、自分で地目変更登記を行う場合は、登記申請自体には費用はかかりません。ただし、申請する際に必要な現地の写真を撮影する場合に発生する交通費など、諸費用が発生する可能性はあります。
土地の地目変更登記は、一般の人でも法務局に相談して申請可能なため、時間に余裕がある人や書類をそろえることに抵抗がない人は、自分で申請することで費用の節約になります。
地目変更の基本情報
土地の地目変更登記は、思いついたその日に申請すれば完了、というものではありません。あらかじめ必要な書類をそろえ、決められた期限内に申請する必要があります。土地家屋調査士に依頼せずに自分で申請を行う場合は、特に手間と時間がかかるため、事前に全体の流れを把握しておくようにしましょう。
地目変更をするタイミング
土地の地目変更登記の申請を行うのは、土地の用途や状況が変わったときです。
家を建てる場合であれば、土地を整地して建物の基礎工事が完了しているなど、「近いうちに建物が建つことが見込まれる状態」になったタイミングで申請します。
「地目」は現在の土地の用途を示すものです。つまり、土地を購入したばかりの時に「これから家を建てる予定だから、あらかじめ地目だけ変えておこう」ということはできません。あくまでも「家が建とうとしている状態」である必要があるということを押さえておきましょう。
地目変更申請の期限
地目の変更があった場合には、登記名義人が1ヶ月以内に地目変更登記の申請を行わなくてはいけません(不動産登記法第37条)。そして地目変更登記申請を怠った場合に、10万円以下の過料の規定もあります(不動産登記法第164条)。
地目変更の申請先
地目の変更申請をするのは、購入した土地を管轄する法務局です。「地目変更登記申請書」という書類を取得し、必要事項を記入したのちに他の書類と合わせて提出します。
申請時に提出する書類は下記のとおりです。
・地目変更登記申請書:法務局の窓口で取得、またはホームページからダウンロード
・現地地図:地目を変更する土地の場所がわかる地図。住宅地図を添付するのが一般的です。
・農地委員会発行の許可証等:農地を宅地等に転用する場合に必要。農地転用許可証、または転用受理の通知・非農地通知書。
・住民票または戸籍謄本
・印鑑
地目変更登記申請書を記入する際、所有している土地がどの地目に該当するのか、どの地目に変更したいのかを明記する必要があります。
土地の地目の詳細については「こちら」からご確認ください。
地目の確認の仕方
所有している土地がどの地目として登記されているかは、下記の方法により個人でも確認可能です。
・登記済証明書、権利書を見る
・課税証明書、評価明細書を見る(固定資産納税通知書に同封)
・登記記録を確認する(法務局への直接申請、または「登記・供託オンライン申請システム」でPDF取得)
ただし、土地を担保に住宅ローンを組む予定がある場合は、PDFでの提出では認められないケースがほとんどということに注意が必要です。
地目変更にかかる期間
法務局による申請書類の内容確認が行われたのち、後日現地調査を行います。申請どおりの用途であることが認められれば、登記完了書が発行されます。
地目変更にかかる期間は1週間~2週間程度です。
地目変更の手順
土地の地目変更申請を自分でやる場合は、下記の流れで進めます。
・登記状況の確認
・申請書類作成
・登記申請
・登記完了
順を追って解説します。
登記状況の確認
法務局で登記事項証明書を取得するなどして、所有する土地の登記上の地目と、土地の現況(使用状況)が一致しているかどうかを確認します。
ここで土地の地目が農地(「田」または「畑」)の場合は、農地転用のための手続きを先にする必要があります。農地転用については次の章で解説します。
申請書類の作成
登記上の地目と土地の現況が一致していることを確認後、地目変更の登記申請書類を作成しましょう。
登記申請
農地の場合は農地転用の手続き完了後、農地以外の場合は申請書類が揃い次第、地目変更登記の申請を行います。提出先は管轄の法務局です。
登記完了
提出した書類に不備がなければ、法務局に申請書類を提出後10日前後で登記完了になります。「登記完了書」が発行されるため、申請した本人が窓口に取りにいって終了です。
地目が「農地」の場合に注意すること
先述のとおり、土地の地目変更登記申請は費用がかからず、一般の人でも自分でできる手続きです。しかしながら、購入する土地の種目が「農地(田または畑)」の場合は、ただ法務局に申請するだけでは地目の変更ができず、地目変更登記申請の前に「農地転用」のための手続きを行う必要があります。
農地転用の申請は、農地が「市街化区域」にあるのか「市街化調整区域」にあるのかで申請方法が異なります。
農地が「市街化区域」にある場合は、管轄する自治体の農業委員会に、地目の変更を申請します。市街化区域においては、ライフラインを整えたり公共施設を建設したりと、人が生活するうえで必要な環境を積極的に整えています。従って必要書類を揃えて申請するだけで地目の変更が可能になります。
一方で「市街化調整区域」は、住宅の建築をはじめとした街の発展を抑制する地域です。そのため、農地の地目を変更する場合は、都道府県知事の許可が必要になります。申請先は同じく自治体の農業委員会です。
市街化調整区域にある土地の農地転用の場合、関係各所との協議が必要になる場合があります。この協議に関しても、一般の人が自身で請け負うことはできますが、ただ法務局に申請に行く場合の地目変更登記申請と比較して、膨大な時間と労力を必要とします。また、地目や土地にかかわる法律的な知識が必要な場面もあります。そのため、農地の地目変更をする場合は、可能であれば土地家屋調査士に依頼して手続きを進めてもらうことをおすすめします。
地目変更をしないとどうなる?
地目変更の登記申請には期限があり、過ぎると罰則の対象ということは解説しましたが、ほかにも地目の変更登記を行わないことで発生するリスクがあります。
住宅ローンを組めない
土地の購入後、地目を変更せずにいると、住宅ローンを組めない可能性があります。金融機関は土地を担保に住宅ローンを組む場合、ほとんどの場合で地目が「宅地」であることを要件にしているケースが多いためです。
購入した土地の地目が「宅地」以外の場合は、土地の造成工事が終わり、建築許可が下りた時点で、すぐに地目変更登記をするようにしましょう。
なお、上記で解説したとおり、土地の造成工事は地目変更に先行して行う必要があります。資金に余裕がない場合は、造成工事分だけつなぎの融資を受ける必要がある点に注意が必要です。
売却の際に不利になる
土地の購入を希望する人は、ほとんどが住宅を建てるための土地を探しています。すでに解説したとおり、住宅は地目が「宅地」の土地にしか建てられず、宅地以外の地目の土地に住宅を建てる場合は、所有者自身で地目変更登記申請を行う手間が発生します。そのため地目の変更をせずに土地を売却に出すと、なかなか買い手が見つからない可能性が高いのです。
不動産は所有しているだけでも納税義務によるランニングコストがかかります。スムーズな売却活動を可能にするためにも、早いうちに地目変更登記を済ませておくことをおすすめします。
地目変更を専門家に依頼する場合の注意点
地目の変更申請は、必ず専門家に依頼をしなければいけないわけではありません。自分で地目変更を行えば、その費用を節約することも可能です。しかし、専門的な知識が必要になり、農地法に関わる登記になると長い時間がかかってしまいます。
そのため、自分で地目変更の登記申請をするのに自信がない人や時間がない人は、土地家屋調査士などの専門家に依頼をするのも選択肢の1つです。
見積もりに関する説明がある
地目変更に関する費用は、専門家によって異なります。一般的に、土地の状況などに問題がなければ1筆あたり約5〜10万円程度で依頼が可能です。仮に、最初に提示された費用が安くても、追加費用が必要になり、最終的にかなりのお金がかかるケースもあります。
そのため、複数の専門家に相談し、見積もりをもらい比較検討することが大切です。その際、見積もりや追加費用などについてしっかりと説明を行ってくれる専門家を選ぶことで、安心して依頼ができるでしょう。
丁寧に相談に乗ってくれる
希望の納期完了時期や土地の利用状況などは、依頼者によってさまざまです。地目変更に必要な書類やどの地目にすればいいのかなど、分からない部分を丁寧に説明してくれるかどうかで、いい専門家か見極めることができます。
今後を見据えて困っていることなどを聞き出し、丁寧に相談に乗ってくれる専門家を選びましょう。
返事が速い
地目変更登記を依頼した後でも、登記の進捗が気になったり、途中で悩みや疑問が出てくることもあります。そのため、すぐに連絡が取れ、親身になって相談に応じてくれる専門家に依頼をするといいでしょう。
常にスタッフが常駐している事務所では、いつでも連絡が取れ相談できる体制が整っており、安心して相談できます。
まとめ
地目変更登記は、土地の状況が変わってから1ヶ月以内に申請しなくてはいけないという期限があります。しかしながら、土地の購入前後は、その他の手続きや住宅の建築契約などでバタつくことが多く、場合によっては申請自体を忘れてしまう人も少なくありません。
土地の地目変更登記を行わないと、住宅ローンを組めない・売却の際に不利になるだけでなく、申請しなかったことによる罰則も発生します。そのため土地の購入を検討するのであれば、購入時に地目を確認しておき、購入後の地目変更申請登記も含めたスケジュール管理が必要になります。
地目変更登記申請は個人でも行えますが、費用を抑えられるぶん、元の地目によっては農業委員会との協議が必要になったり、申請の内容によっては法務局とのやりとりが発生したりします。複雑な手続きになりそうだと感じたら、専門家である土地家屋調査士に相談するようにしましょう。