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2022.12.06

土地の購入

セットバックとは何か?その詳細と購入時の注意点について詳しく解説!

土地や家の購入を検討しているときに、不動産広告で「セットバック」という言葉を見たことがありませんか?

セットバックとは「前面道路から後退して建築する」という意味の言葉です。これらを除外した有効敷地範囲内でしか建設できず、この範囲は私道扱いとなるため「私道負担」と呼ぶ場合もあります。

「要セットバック」「私道負担」と表示されている土地は、建築可能面積が実際より縮小されます。既存の建物を購入した場合でも、改築時に法律対象となり対応が必要となります。そのため、何も知らずに購入すると、思ったとおりの家を建てられない可能性があります。

要セットバック物件の購入はできるだけ避けることをおすすめしますが、いくつかのメリットもあります。ただしそれ以上にデメリットやリスクなど、特徴を十分に理解することが重要です。

一般的に不動産は大きな買い物です。家の購入を考えている場合でも、不動産への投資を考えている場合でも、取り返しのつかない過ちを避けるために、セットバックについて詳しく理解することは重要です。

この記事では、セットバックとは何か? セットバック要物件を購入する際の注意点を詳しく解説します。

セットバックとは?

建築用語の「セットバック」とは、道幅確保のため、大きく後退させる意味です。家屋の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならないと法律で定められているため(接道義務)、 4m未満の幅をセットバックして4mの幅を確保する必要があります。

セットバックは建築基準法第42条第2項に規定されていますが、建築基準法が規定された1950年以前に整備された道路や土地は基準を満たしていないものが多くあります。このような道路や土地は、例外としてそのまま使用することが認可されていますが、建物の建て替え時にはセットバック義務が課せられます。

専門的には、セットバックが予定されている道路を「2項道路」「みなし道路」と呼んでいます。

消防・環境保全のために決められている

万が一の火災時に消防車が通行できる道幅を確保し、日当たりと風通しを良くする意味合いから、法規制化されました。後退して土地を狭くすることに賛同しない人もいますが、長い目で見れば住民の利益になるルールと言えます。

また、住民の協力を得てセットバックすることで、最適な道路・土地環境を整えることができます。環境が整備された土地は資産価値も上がるため、土地や建物を売却する際にメリットが得られる可能性が高くなります。

通行の妨げになるものすべて設置はNG

消防の観点から前面道路で消防車が通行できる必要があるため、通行を妨げるもの、例えば門やフェンス、外壁などを設置することはできません。道路としての利用が主目的のため、原則としてそれ以外の利用はできないのです。

土地の利用権のみ制限

セットバックでは道路以外での利用が制限されますが、セットバックした土地を自治体に寄付したり買取依頼などをしたりしない限り、土地の所有権は土地所有者のままとなります。つまり、土地の利用権は制限されますが、所有権は法的な制限を受けません。

セットバックの目的

セットバックの制限は非常に多いのですが、そもそもこの法律が制定された理由は何故なのでしょうか?

セットバックは土地の利用制限をかける代わりに周辺環境保全とそれによる周辺の地価向上などを狙っているのです。ここでは大きく3つの目的について解説します。

道路確保

まず、道路幅確保目的のセットバックについて解説します。

これは、国民の生命、健康、財産を守るための最低限の基準を定めた建築基準法と関係があります。その中には、建物の「道路との接続義務」に関する規定があり、土地が道路と2m以上接していないと建物を建てることができないという決まりがあります(第43条)。

また、建築基準法にも道路が規定されており、基本的に幅員4m以上が建築基準法の道路として認められる必要があります(第42条)。

この法律制定前の規制に適合しない幅員1.8m以上の道路を「みなし道路」とみなし、既存の建築物を許可します。第42条第2項に定められていることから「第2項道路」とも呼ばれます。

ただ、建て替えなどの場合においてこのような「みなし道路」が道路と接続している敷地の場合、幅員を確保するために後退する必要があります。

斜線制限

その他の目的で、建物の高さを保持するために対応しなければならないケースがあります。採光や風通しを確保するため、隣接する土地や道路境界からの距離に応じて建物の高さを制限する規制があります。

道路斜線規制とは、道路の境界線から延びる斜線よりも高くしてはならないという規制です。この場合建物自体や2階部分をセットバックすることで、道路の斜めの制約を受けずに建築できるスペースを広げる方法があります。

これは「建物のセットバック」とも呼ばれ、道路幅確保のためのそれとは性質も目的も異なります。

地域価値の確保

自分の土地に建物を建てられないなど損でしかないと思う人もいらっしゃるかもしれません。しかし、毎日の通勤や子供の送り迎え、車のすれ違いなど、狭い道は住民にとって不便なだけでなく、万が一の火災時には緊急車両が通行できなくなります。

住民全員で協力し、隣接道路の幅員確保に協力することで、防災・防犯・景観の面でのエリア価値を高めることができるといえます。

セットバック物件を購入する際の注意点

セットバックは法律である以上絶対です。
対象エリアに建築できないため、対象となる物件を購入する場合、十分に注意する必要があります。

ここでは、このような物件を購入する前に知っておくべきポイントを解説します。

利便性が低い

セットバック要物件は、防災面でデメリットがあります。

そもそもこの法律が必要な理由は、道路に接する義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する必要がある)であり、それを行うために設けられた規定であり災害時に救急車・消防車が通りやすくなります。

対象物件は、幅員の狭い道路に面しているため、防災性は低いと言えます。火災等の際に緊急車両が通行できなくなるリスクを考慮すると、セットバックが必要な中古物件の購入は避けることをおすすめします。

すぐに建て替えを考えているのであれば問題ありませんが、そのまま利用し続ける場合は注意が必要となるわけです。

また、道路幅問題は、緊急車両だけでなく自分の車で移動もしづらい点につながります。車での通行が困難な場合、買い物やその他の生活必需品への外出が困難であり、利便性は極めて低いといえるでしょう。

セットバック費用は所有者負担の場合がある

セットバックした土地を道路として利用するには、測量や建築物の撤去、舗装など多額の費用がかかります。

多くの場合、お住まいの地域の地方公共団体(市町村)の負担となり、さらにセットバック部分を自治体に売却または寄付することで、その後の維持管理はすべて地方自治体が行うことになります。

一方で、一部の自治体では、所有者がすべての費用を負担しています。セットバックに必要な費用は50万円~100万円程度ですので、建て替えの際は費用負担が大きくなる可能性があります。

セットバックする土地の取り扱いは自治体によって異なりますので、必ずお住まいの自治体に確認しましょう。

建ぺい率、容積率が狭くなる

セットバック部分は道路になるため、建築物の設置はNGということになります。そのため、セットバックすると建物を建てることができる「有効敷地面積」が狭くなることをあらかじめ把握しなければなりません。

有効敷地面積は、土地(面積)ごとの「建ぺい率」や「容積率」などの指標によって決まります。

セットバックが必要な土地の場合、建ぺい率および容積率の算定において、当該面積を敷地面積から除外する必要があります。

仮に2m幅の道路沿いの 10m x 10m の土地(対岸に住宅地)があったとしましょう。この土地は100㎡の面積がありますが、1mのセットバックが必要なので、10㎡のセットバック地を除外しなければならないということになります。よって、セットバック後の有効敷地面積は 90㎡ となってしまうわけです。

この土地が建ぺい率:60%、容積率:200%の場合、建設可能な建物の建築面積は 90 × 60% = 54㎡以下に、延べ床面積は 90 × 200% = 180㎡にそれぞれ制限されます。

実際の面積100㎡ではなく、有効敷地面積に相当する90㎡で計算しているため、使える範囲は非常に狭くなってしまうことになるわけです。物件を購入する前に十分に理解していないと、希望した家が建てられないという状況に陥る可能性があるので事前確認が必要です。

利用制限がかかる

その部分の所有権をセットバックで失うことはありませんが、「道路」と見なされ、使用制限の対象となります。当該エリアに建物を建てることはもちろん、門やフェンスの設置や、物置や駐車場として使用することもできませんのでご注意ください。

門扉やフェンス、駐車場などを設置する場合は、有効敷地範囲をしっかり測量・把握し、その中に設置するようにしなければならないということになります。

売却しづらい可能性がある

セットバック物件は、売却しづらい物件の可能性があります。

特に、建替えする場合は要注意です。これらが該当しない物件と比べ、使い勝手が悪く建替えがしづらいなどデメリットが多く購入してもらえないケースが多々あります。仮に売れても基本的には相場より安い価格になるでしょう。これは、有効活用できない部分があり、実質的に価値がないと見なされるためです。

該当する土地や建物を購入する場合、通常よりも売却リスクが高くなることを認識しておく必要があります。長く住む予定ならあまり気にしなくてもいいかもしれませんが、不動産投資として購入するケースは避けるべきでしょう。

セットバックの土地を購入してよいケースの例

セットバック物件はこれまで説明したとおり一般的にはおすすめしません。
しかし、事前に注意点を理解し、問題なければ購入した場合メリットにつなげるケースもあります。

この章では、当該物件を購入してもよいケースについて説明します。

土地が安い

当該物件は、一般的な物件と比べると価格が低くなる傾向があります。なぜなら該当する部分の土地そのものに価値がないと考えられているからです。ただし該当するエリアを除いた有効土地面積で計算し相場より安価である場合、購入メリットがあります。

ただし、対策する施工費用を考慮し、非常に慎重に判断しなければなりません。しっかり施工費用などを確認し、最終的な価格が果たして安価かどうか確認しましょう。

除外しても十分な敷地面積な場合

この物件購入時における最大のデメリットは、有効敷地面積が実際の敷地より狭くなってしまう点です。
しかし事前にそのことを理解し、有効敷地面積内で目的を果たせるというのであれば、何ら問題ありません。

該当部分を除外した有効敷地面積と、規定の建ぺい率・容積率を十分に確認したうえで建築計画を立てれば、当該物件購入にメリットが出てくるでしょう。

中古の建売りで購入する場合

セットバックは、新しい建物を建設する際の制限であり第二道路に面して建つ既築物件は引き続き利用することが可能です。つまり中古物件を購入すれば、そのまま住み続けることも、賃貸に出すことも問題なくできます。

セットバック物件は前述したとおり売却できない恐れがあります。ただし、そもそも再建や売却を期待していない場合、これらのリスクは考えなくてもよいということになります。

ただしセットバックしなければ、引き続き防災上の問題は排除できませんので注意すべきです。中古物件をそのまま使い続けることは法的には認められていますが、防災の観点からはおすすめできません。自宅に住んでいても賃貸に住んでいても、家族やテナントの安全のために、対応することがベストといえます。

まとめ

今回はセットバックについての概要と、セットバック物件購入時の注意点について解説しました。

セットバック要物件は、あらゆる環境面での問題や利便性・防犯性など多くのデメリットがあることから、一般の人には敬遠されがちです。購入時は実際に利用できる有効敷地面積を適切に計算したうえで購入検討するようにしましょう。

この記事でセットバックについて理解し、住宅や投資用不動産を購入するのに役立てていただければ幸いです。

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