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2022.06.28

不動産の購入

不動産会社が利用するレインズって何?一般人も見られるシステムについても解説

不動産取引の経験がある人は「レインズ」というシステムの名前を聞いたことがあるかもしれません。レインズは、不動産会社が自社の顧客に紹介する不動産の情報を検索したり、売却を依頼された不動産の買主を募集したりするために使用するシステムです。

現在の不動産の流通状況だけでなく、過去の取引事例も見られるシステムではありますが、閲覧できるのは宅建業免許を取得した不動産会社だけで、一般の人は見ることができません。

しかし例外として、不動産会社に売却を依頼した売主は、自身の物件情報を閲覧できます。また、レインズに掲載されているのと同じような情報を一般の人が閲覧できる「レインズマーケットインフォメーション」と呼ばれるシステムも存在し、不動産業者以外の人でも不動産取引に役立てることができるのです。

そこで本記事では、レインズとレインズマーケットインフォメーションの特徴と、一般の人が不動産取引を有利に進めるための活用方法について解説します。

1.不動産流通ネットワークシステム『レインズ』とは?

疑問に思う人たち

そもそもレインズとはどのようなシステムなのでしょうか。役割や登録されている内容について解説します。

1)レインズって何?

レインズ(REINS)は、国土交通省から指定を受けた「不動産流通機構」が運営している不動産情報システムで、「Real Estate Information Network System」の略称です。
レインズには全国の土地や戸建、マンション、収益不動産の情報が登録されており、加入している全国の不動産会社が閲覧できるようになっています。

「この不動産を売却したい」と依頼を受けた不動産会社は、レインズに物件情報を登録します。登録された物件はリアルタイムでネットワーク上に公開されて、他の不動産会社が閲覧できるようになります。その情報を見た不動産会社が、自社の顧客に対して紹介するという仕組みです。

レインズは全国4つのエリアに分けられており、それぞれ異なる団体が運営しています。

名称 機構 都道府県
東日本レインズ (公財)東日本不動産流通機構 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県
中部レインズ (公社)中部圏不動産流通機構 富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿レインズ (公社)近畿圏不動産流通機構 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
西日本レインズ (公社)西日本不動産流通機構 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

 

2)レインズの役割とは?

レインズの役割は大きく分けて以下の3つです。

(1)不動産情報を一元化し、不動産流通をスピーディーかつ円滑にする

不動産の情報をレインズという1つのネットワークに登録することで、全国の不動産会社が土地や建物の流通状況を一度に検索できるようになります。
多くの不動産会社が情報を見られることにより、より早く自社の顧客のニーズに合った不動産を見つけられたり、売却物件の購入希望者が見つかったりといった、効率的かつスピーディーな不動産取引が可能になっているのです。

(2)豊富な取引事例を提供し、不動産の適正価格を明確化する

多くの取引事例を参照できることのメリットとして、不動産の適正価格が明確になるという点が挙げられます。不動産の売買契約が成立したら、不動産会社は速やかにレインズに成約情報を登録しなくてはいけません。こうして蓄積された取引事例は、不動産価値を査定する際の参考として使用され、不動産の適正価格を算出するのに役立てられています。

(3)より安全な不動産取引を実現する

不動産会社と依頼主との間で締結する媒介契約のうち、「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」においては、不動産会社は「レインズへの物件の登録」と「依頼主への売却活動の状況報告」という義務が発生します。媒介契約締結後に物件情報をレインズに登録し、閲覧数や問い合わせ状況などを一定期間ごとに依頼主に報告します。
売却活動を不動産会社任せにせず、依頼主も積極的に参加できる環境を提供することで、より安全な不動産取引が可能になっているのです。

3)レインズに登録されている内容

レインズには現在売買に出されている不動産や、過去に成約になった不動産の情報が掲載されています。

主な登録内容は下記のとおりです。

名称 ビル名など
立地についての情報 住所・沿線・最寄り駅など
構造などについての情報 築年・平米数・間取り・構造など
金額についての情報 募集金額など
図面 外観写真・見取り図・募集図面(マイソク)など
成約情報(成約済みの場合) 成約時期・成約金額など

不動産によっては売主の情報(法人名や住所、問い合わせ先の電話番号など)が掲載されている場合もあります。

4)レインズを利用できるのは不動産会社のみ

レインズは不動産会社だけが利用できるシステムで、一般消費者は閲覧できないようになっています。その理由は個人情報保護のためです。

すでに解説したとおり、レインズに登録されている物件情報には、不動産の構造や面積・階数だけでなく、建物の名称や住所といった個人の特定につながる情報が多く掲載されています。一般消費者にレインズの情報を公開してしまうと、個人情報の漏洩につながるため、加盟している不動産会社しか閲覧できないようになっているのです。

ただし、後に解説しますが、不動産の売却を依頼した売主については、自分の物件情報のみをレインズ上で閲覧することが可能になります。

2.不動産会社にレインズに登録してもらうメリットと方法

メリットとデメリットの看板

「一般人が閲覧できないのであれば、レインズに物件を登録しても意味がないのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし実は、レインズを上手に活用すれば不動産の早期売却につなげることも可能です。

1)レインズに登録するメリット

レインズに物件を登録してもらう主なメリットは、多くの不動産会社が閲覧できるようになるという点です。

レインズに登録されていない場合、依頼を受けた不動産会社は、自社サイトへの掲載・広告掲載・自社の顧客への紹介といった方法で買主を探します。こうした自発的な宣伝活動は多くの手間と労力が必要になるだけでなく、情報がなかなか広まらないため、買い手が見つかるまでに時間がかかる可能性が高いのです。

その点レインズに不動産情報が掲載されると、顧客に紹介するための土地や建物を探している他の不動産会社の目に多く触れることになります。不動産会社が目にする機会が多いと、そのぶん成約までのスピードが速まるため、「不動産会社に依頼したのにいつになっても買い手が見つからない」というリスクが少なくなります。

2)レインズに登録するデメリット

レインズに不動産情報を登録することには、メリットばかりではなくデメリットも少なからず存在します。

資産価値が高い不動産は、仲介を依頼した不動産会社が広告を打ったり顧客に紹介したりするだけで買い手が見つかります。つまり、わざわざレインズに掲載しなくても購入希望者が現れ、契約内容(売却金額等)の交渉をする際にも不利になりにくいのです。

ところが、レインズに不動産情報を掲載すると逆のことが起こる可能性があります。「レインズに掲載されている=買い手が見つかりにくい(人気のない)不動産」というイメージを持たれてしまい、購入希望者が現れたとしても、金額交渉をされてしまい、結果として希望の金額で売却できないということが起こり得るのです。

3)レインズに登録してもらう方法

これまで解説してきたように、レインズに登録すると自身の不動産の情報が多くの不動産会社の目に触れることになるため、早期成約につながる可能性が高まります。
レインズに不動産の情報を登録してもらうために、できる行動は大きく分けて2つです。

(1)媒介契約を締結する

1つ目は、不動産会社と「媒介契約」を締結するという方法です。
不動産会社と締結する媒介契約は、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。このうちの「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」のいずれかを締結することで、不動産会社が対象物件をレインズに登録する義務が発生します。

参考までに、3種類ある媒介契約の概要についても説明しておきます。

専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
契約可能な不動産会社の数 1社 1社 複数可
買主との直接取引 不可
レインズ登録 媒介契約締結から5日以内 媒介契約締結から7日以内 任意(義務はない)
契約期間 3ヶ月以内 3ヶ月以内 3ヶ月以内*

*法令上の制限はありませんが、国土交通省の標準媒介契約約款において、「一般媒介契約の有効期間は、3ヶ月を超えない範囲で協議の上定める」とされています。
(参照元:国土交通省 『宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款』p.20(有効期間)第8条 https://www.mlit.go.jp/common/001213683.pdf

上記のとおり、専属専任媒介契約の場合は媒介契約締結から5日以内、専任媒介契約の場合は契約締結から7日以内に、対象の不動産についてレインズに登録する義務が発生します。ただしこれら2つの媒介契約を締結すると、他の不動産会社に仲介を依頼したり、自身で買主を見つけたりすることができなくなったりする(専属専任媒介契約の場合)という点に注意が必要です。

(2)不動産会社に頼む

2つ目は媒介を依頼する不動産会社に、レインズへの掲載を頼む方法です。
「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を締結すると、不動産会社はレインズに物件を掲載する義務が発生しますが、これら2ついずれかの媒介契約を締結しないとレインズに掲載できない、ということではありません。
先ほどの図のとおり、「一般媒介契約」の場合はレインズの掲載は任意とされており、掲載してもしなくてもどちらでもいいということになっています。

つまり、不動産会社に「レインズに掲載してほしい」とお願いして了承してもらえれば、一般媒介契約でもレインズに不動産の情報を掲載してもらうことが可能になるのです。

ところが、不動産会社によっては、一般媒介契約の場合はレインズの掲載を断られるケースも少なくありません。その理由は、売買契約が成立した際に、不動産会社が受け取れる報酬が減ってしまう可能性があるためです。

(3)「両手仲介」と「片手仲介」

不動産売買の取引において、不動産会社の仲介の形態は2通りあります。1社の不動産会社が売主側と買主側の両方の契約業務を担う「両手仲介」と、売主側と買主側でそれぞれ別の不動産会社が契約業務を担う「片手仲介」です。両手仲介の場合は売主と買主の両方から、片手仲介の場合はいずれか一方からのみ、仲介手数料を受け取ることになります。つまり、仲介する不動産会社としては、同じ不動産の売買契約を締結するにしても、「両手仲介」の方が会社の利益が大きくなるのです。

レインズに不動産情報を掲載することで、多くの不動産会社の目に留まるため、成約までのスピードは上がります。しかしその一方で、「両手仲介」をできる可能性が低くなる=もらえる報酬が下がる可能性もあるということです。また、「一般媒介契約」の場合は売主には複数の不動産会社に依頼する権利があるため、「せっかくレインズに掲載したのに、他の不動産会社で契約されてしまい報酬をもらえなかった」という「ただ働き状態」になる可能性もあります。

こうした側面から、不動産会社によってはレインズに掲載せずに、自社で抱えている顧客に対してのみ不動産の紹介を行い、「両手仲介」を狙うケースも考えられるのです。

不動産を売却したいからといって、必ずしもレインズに登録してもらうことがお得というわけでもありません。自身がイメージする売却までのスケジュール感や売却希望金額、仲介を依頼する不動産会社の営業力なども考慮しながら行動するようにしましょう。

3.レインズの見方とチェックしたいポイント

ルーペとチェックリスト

レインズは原則として一般の人は利用できませんが、売主は自分の物件に限り掲載されている情報を見ることができます。
ここからはレインズ上で自身の物件情報を閲覧する方法と、チェックしたいポイントについて解説します。

1)登録してもらった時に発行される登録証明書を使う

不動産の情報がレインズに掲載されると、登録した不動産会社に登録証明書が発行されます。登録証明書にはレインズのURLとID・パスワードが記載されており、それを使用することで自身の不動産の登録ページを閲覧できるという仕組みです。

2)登録情報を確認する

レインズで自身の不動産のページにアクセスしたら、登録されている情報が正しいかを確認します。契約手続きが進むなかで、登録されている内容に誤りがあると判明した場合トラブルになりかねません。間取りや築年数が合っているか、図面が登録されているかについても必ずチェックするようにしましょう。

3)「囲い込み」されていないか要注意

レインズでは、それぞれの不動産についてのリアルタイムな取引状態も閲覧できます。
「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つのステータスがあり、「公開中」であれば他の不動産会社が自社の顧客に紹介できる状態であるということを表します。

ところが、稀に「公開中」以外のステータスに変更されている場合があります。これを「囲い込み」と呼び、不動産会社が両手仲介を狙って、他の不動産会社に売却物件を紹介していない状態です。こうした囲い込みは、不動産の流通促進や円滑な取引の妨げになるとして、不動産業界全体で問題になっている悪質な行為です。

不動産会社からの囲い込みに遭わないためにも、レインズに掲載されている取引情報は定期的にチェックするようにしましょう。

4.一般の人でも見られる「レインズ・マーケット・インフォメーション」と活用法

グラフとビルの模型

土地や建物、マンションの購入を検討するなかで、希望するエリアや間取りの不動産価格の相場を知りたいという人は多くいらっしゃいます。そんな人に活用されているのが、一般の人でも閲覧できる「レインズ・マーケット・インフォメーション」です。

1)見られる内容

レインズ・マーケット・インフォメーションに登録されているのは、過去に成約になった不動産の情報のみで、下記のような内容が閲覧可能です。

・成約時期
・沿線
・最寄り駅
・築年
・平米数
・間取り
・成約価格 等

通常のレインズには、不動産の所有者をはじめとした個人を特定できる情報が掲載されているため、個人情報保護のためにも一般の人は閲覧できません。一方レインズ・マーケット・インフォメーションは、個人情報を見られない状態にしてあるため、一般の人でも閲覧可能になっているのです。

2)活用方法

一般の方がレインズ・マーケット・インフォメーションを活用できる場面は大きく分けて2つ。
「不動産を売却するとき」と「不動産を購入するとき」です。

土地や建物といった不動産を売却する際、一般的には不動産会社に査定を依頼することになります。査定の基準は不動産会社ごとに異なり、依頼する業者によって査定額が変化するということも少なくありません。レインズ・マーケット・インフォメーションでは、過去にどのエリアでどのような物件が取引されたのか、どれくらいの価格で成約になったのかを見られます。自身が所有する不動産と似た条件の成約事例を参考にすることで、仲介を依頼する不動産会社を選定する材料になります。また、不動産会社を介さずに個人間で売買する際も、売主と買主の間で決定する売却金額の参考にすることも可能です。

過去の査定額は、これから不動産を購入しようとしている人にとって、有益な情報です。
「あそこのエリアの土地が欲しいんだけどいくらくらいするんだろう?」「中古の戸建を購入したいんだけど、どのエリアだと予算内に収まるだろうか?」といった疑問を気軽に解決できるのがレインズ・マーケット・インフォメーションの魅力です。

不動産を購入する際、最終的には不動産会社に依頼することになりますが、まだ具体的に購入すると決まっていない段階で相談に行くのは気が引ける、という人でも利用できる点がメリットと言えます。

ただし、すでに解説したとおり、レインズ・マーケット・インフォメーションに掲載されている情報は、あくまでも過去の成約情報です。不動産の価値や価格は常に変化しているため、現在も同じ価格で売れる・買えるということではないという点は覚えておきましょう。

まとめ

まとめ

レインズは不動産会社のみが閲覧できるネットワークですが、一般の人が不動産の売却を依頼する際に上手に活用することで、より売買契約締結までのスピードを早めることが可能になります。

また、一般の人が閲覧できるレインズ・マーケット・インフォメーションにも、日本全国の不動産の取引事例が多数登録されています。所有する不動産を売却するときだけでなく、新しく不動産の購入を検討する際にも、正しい相場観を知る材料になるのです。

不動産は非常に高額な取引になるため、不動産会社に媒介を依頼する場合でも、不動産会社に任せきりにするのは危険です。レインズやレインズ・マーケット・インフォメーションといった不動産流通のネットワークを上手に活用しながら、賢く不動産の売買を行うようにしましょう。

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